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国際交流員ブログ
中国の「请客」文化

  法務省の在留外国人の統計データによると在日外国人の中で中国人が最も多く、2015年6月現在の在住者は65.6万人で、人口100人あたり0.52人という計算になります。岐阜県の中国人居住者は11,477人で、人口総数の0.552%を占め、なんと都道府県の中国人比率ランキングで2位に入りました。私の元の勤め先である江西師範大学から交換留学生として岐阜県に住んでいる学生も十人ぐらいいます。「日本での生活はどうですか」と彼らに聞いたところ、「日本は美しい自然と豊かな風土に恵まれ、独特の文化をもち、とても魅力的です。周りの日本人はみんなやさしいし、食べ物も美味しいし、とても過ごしやすいところです」と答えました。でも、日本人は冷たい、よそよそしい、日本に来ても日本人の友達ができなくて、寂しいという、留学生たちの不満も聞かれました。日本の友人がいないと嘆いた中国人留学生たちは、私から見れば、実は活発で付き合いやすい子で、周りの人と仲良くしているし、話相手にも不自由はしません。決して孤独ではありません。どうして寂しがっているかというと、食事会の時は割り勘で、一度も「请客」(チンクー ごちそうするという意味)を受けていない、そして日本人に自宅に食事に招かれたこともないのがその理由らしいです。彼らの話から、日本と中国の生活文化の大きな違いがあるということを思い知らされました。

 

 確かに日本人の集まりに参加する場合、大抵は割り勘で、学生が多い場合は社会人が多く出したりしますが全部1人が出すということは少ないです。一方、中国人にとって、食事会は相手への好意や親しみを表現し、友好関係を温める場ですから、実は割り勘というものが好まれません。それがたとえ友人同士であったとしても、食事へ誘った人(ホスト、主催者=中国語では「东道主(dōngdàozhǔ)」)が全員の分を支払いますし、互いをよく知った間柄ならば、「明らかに経済的に豊かな人物」が支払いを担当することもあります。また、デートでは男性がすべての支払いをするのが通例であり、それが男の見せどころでもあります。店に入って円卓に座った時点で、「今日はこの人が持つんだろうな」とだいたい予想がつきます。ごちそうする人は「何でも好きなのを頼んでね」「お腹一杯?もっと追加したら」と周りを気遣います。ごちそうされる人は適当な額で収まるように注文します。上下関係の無い友人、同僚関係の場合は交代でおごり合うことが多いです。例えば、今回A君がB君をごちそうしたら、次回はB君がA君をごちそうします。つまり、中国で生活をしていると「ごちそうになる」という機会が非常に多いのです。割り勘が習慣化している日本人にとっては、「気が引ける」「申し訳ない」という気持ちになるかもしれませんが、逆に日本で生活している中国人は日本の割り勘文化に馴染めなく、「絶対ありえない」「日本人ってケチなの?」と思ってしまいます。

 

 そして、中国人は友達を自宅に招いてごちそうすることが好きです。たとえ自宅がいかに狭く汚なかろうと、ともかく友達を自宅に呼んで、これでもかこれでもかと食事をすすめます。しかも、食べきれないほどの料理を出して食べてもらいます。中国では、食事の際に器が全部空っぽになっていることはごちそうする側の人にとっては恥ずかしいことで、食べきれないほどの食事と酒でもてなすことが自分の熱意を表わします。一方、日本では、出された食事を残さずきれいに食べることがある種のマナーになっています。この文化の違いを知らないため、「中国人と食事すると、いつもお腹が破裂しそうになる」と苦しむ日本人がいます。中国では、一度でも自宅で「请客」をすれば、たとえ十五分前に知り合ったばかりでも「朋友」(友達)になれ、やらなければたとえ十年来の知り合いでも真の「朋友」とは言えないのです。そしていったん「朋友」になった人間関係は固いです。

 

 そういうわけで、その中国人の留学生たちから見れば、日本人のほうが他人によそよそしいように思っています。「汚い」とか「狭い」とかを口実に、我が家に客を招こうとはせず、やむをえない場合は応接間に通し、客をその他の生活の場から遮断します。一方、日本人は中国人の頻繁な「请客」がうっとうしいこと甚だしいと思っているかもしれません。だから日本人の皆さんにぜひ中国の「请客」文化を理解していただきたいです。「请客」は中国人の情熱(ルーチン)で、中国人にとっての友情の証しであり、「謝謝」(シエシエ)や「再見」(ツァイチエン)とともに覚えておくとよい中国語です。

 

 では、最後に「请客」に関する中国語の会話を紹介します。

■这次让我请吧。

Zhè cì ràng wǒ qǐng ba.

今回はわたしが出しますので。

■又让你破费了,真是过意不去。

Yòu ràng nǐ pòfèi le, zhēnshì guòyìbúqù.

また出していただくなんて、ほんとうに申し訳ないです。

 

 ちなみに、中国ではおごられても「ごちそうさま」とか「ありがとうございます」とは言わない習慣です。

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