トップページ > 国際交流員ブログ
国際交流員ブログ
月に馳せる思い

  空高く爽やかな秋になりました。近年、日本ではハロウィンが爆発的な広がりを見せています。街中にはかぼちゃ、おばけ、黒猫、魔女とほうきの飾り付けが施され、店先にはハロウィン限定デザインのお菓子が並ぶなど、ハロウィンムードを盛り上げています。とはいえ、中国でも日本でも昔から秋の一番大きな伝統行事はなんといっても中秋節です。中秋節の時、日本ではお団子やススキを供え、月見団子を食べますが、中国では小豆やクルミなどの餡が詰まった月餅を食べたり、灯篭で町を彩り提灯祭りを楽しんだりします。このように中秋節の風習は中国と日本は若干異なりますが、旧暦の八月十五日にお月見をすることは日中共通です。この日に一番明るく、丸く、美しい月を見ながら、いろいろな思いを馳せるのです。

  古来から、空に輝く月は遠くて神秘的な存在です。人々は美しい月を眺め、そこにだれが住んでいるか、どんな物語が展開されているかなど、いろいろ想像を膨らませました。月の姿は地域や民族、国民性によっていろいろな見方があり、世界各国の人は月にまつわる多くの神話や伝説を作り上げました。中国では、月に嫦娥(チャン ェ゛ァ)という美女が薬を飲み、月に昇り、玉兎(月に住むうさぎ)と一緒に月に住んでいるという「嫦娥奔月(嫦娥が月に奔る)」伝説があります。日本人はよほどもちが好きなのか、月やその表面の模様を眺め、月に住むうさぎはもちをついていると想像しています。そのほか、カナダではインディアンがバケツを運ぶ少女にたとえ、北ヨーロッパでは本を読むおばあさん、南ヨーロッパでは大きなはさみのカニにたとえるなど、とても面白いです。

  このように遥かなる天界は夢とロマンが満ちている神秘的なところであり、地球上の住民はこの未知なる世界にあこがれ、古代から道具を伝わって天に上るさまざまな物語をつくりました。例えば、「バベルの塔」や「ヤコブの梯子」、そして童話の「ジャックと豆の木」、さらに芥川龍之介の名作「蜘蛛の糸」などです。アポロ月面着陸が実現されて以来、人間は月へ行くのはもはや夢でなくなりました。しかし、宇宙飛行士でもない普通の人たちはそう簡単に月に行けるわけではなく、人間の月に対する執着心はいまだに強いものがありますす。少しでも空に近づこうと、半端ではない高さを誇る建築物の建設を次々と手掛けました。2012年、東京タワーに代わって、634mの高さを誇る東京スカイツリーはドバイのブルジュ・ハリファに次ぐ世界二番目高い人口建造物として東京の新たなシンボルとして君臨しています。当時(1952年まで)アジア地域においてもっとも高いビルである「国際飯店」が位置している上海のバンドは昔からアジアの高層ビル建設をリードしています。去年(2016年)の夏、金茂ビルの88階、高さ340.6メートルの展望台に「雲中漫歩」と称される全長60メートル、幅1.2メートルの屋外遊歩道がオープンし、スリル感満点の新たな人気観光スポットとなっています。普段地に足が付いた生き方をしている人たちはたまに天まであがり、思い切って羽を伸ばしたいのですね。

  話を戻しますが、私たち中国人にとって、中秋節は家族が集まる日で、一緒に食事をし、月餅を食べながら月見をする風習があります。しかし、宋の蘇軾(そしょく)の水調歌頭「明月幾時有」という詞で描かれたように、「人有悲歡離合、月有陰晴圓缺、此事古難全(人に悲歡離合有り、月に陰晴圓缺有り、此の事古より全くなり難し)」、人には常に悲しみや喜び、別れ、めぐり合いがあり、日本にいる私のような家族や親戚と中秋節を過ごせない人はたくさんいます。しかし、「海上生明月、天涯共此時(海上 明月生じ、天涯 共に此時なり)」という詩のように、たとえお互いに遠く離れても、今この時同じ中秋の名月を仰ぎ見、相手を思う念を月に託し、月に心の憩いを求めることができます。

 

2.png

コメント(2)

日本では月の模様がウサギの餅つきのように見えるところから、十五夜にはウサギが登場しますが、中国でも模様からウサギが見えていたんでしょうか?

コメントする(comment) (ここをクリックすると入力欄が表示されます)

必須
必須